鳴門の渦潮

 

もう駄目です。
希望が見えません。
あまりにも辛過ぎます。
生きることがこんなに苦しいとは思いませんでした。

心の中は幸せに満たされていた。
だけど満たされた心がすべて苦しみに変わった。
先立つものは何もない。

この鳴門海峡の渦潮に身を投じて消えていきたい。
ぐるぐる回され何もかも拡散されて
無くなってしまえばいい。

すべてを決め私は吸いこまれるように
目が回る渦潮の中に飛び込んだ

のみこまれていく・・・
螺旋を急速に転げ落ちるように・・・



すると何処からか
巨大メンマのいかだに乗り
額に海苔を貼り付けた
ぐるぐるほっぺの漁師が
輪切りにした巨大ねぎの浮き輪を投げ
ちぢれた黄色い網で私を救い
チャーシューの島へと運んでくれた。

私はうずくまっていた。
寒いはずなのに燃えるような熱さの中で。
海はラー油のような赤潮になっていた。

胡椒の雨が降りつけ
私はくしゃみをする・・・
「大丈夫ですか?」という声が聞こえた。



ふと顔を上げるとそこはラーメン屋だった。
真正面の厨房で立っている太い眉毛のご主人が
「大丈夫ですか?お客さん」と声をかけてきていた。

顔がひりひりして熱い。
「お客さん、顔拭いてくださいよ」とご主人が布巾を差し出す。

顔から滴り落ちる激辛スープを拭取り。
鼻の穴に入ったメンマと額に張り付いたチャーシューを食べる。

「あと1分ですよ」とご主人がせかす。
この大盛り激辛ラーメンを10分以内に食べきればタダ。
食べなければいけない。何せお金を持って来てない。

どうやら私はこのラーメンを食べている最中に
あまりの辛さと量で苦しくなり失神し、
どんぶりの中に顔をうずめてしまったようである。

私は渦中ではなく中華に身を投げていたのだ。

残るのはナルト一枚だけ。
これさえ食べれば・・・

どんぶりの中にある一枚のナルトを見つめた。

目が回る・・・
また意識が遠のいていく・・・


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2012/08/26

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「迷いの森」

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「Angel」

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「White Room」

 

 

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